2021年12月11日

■第5回きやま創作劇【予習編6】

四、絹の糸

 今回の公演に際し、書き下ろされた作品です。「絹の糸 朗読劇ver」と銘打たれていますが、実は第5回きやま創作劇として1時間を越える脚本が昨年度作成されています。今回は、コロナ禍を乗り切るためにやむを得ず「朗読劇ver」に再構成されたものです。

 物語の舞台は昭和前期、我が町きやまにあった製糸場に勤めた一人の女性と基山の青年の甘くせつなくもはかない物語です。物語の本筋は、劇を御覧いただくとして、物語の舞台となった我が町きやまにあった製糸場について少し触れておきましょう。

 現在のJR基山駅東方の一帯に、長野県に本社を置く金四製糸場の基山支店が大正15年(1926)2月に設立され、5月2日の落成式から操業を開始します。基山のみならず周辺の町や村でカイコを育てる養蚕が盛んに取り組まれます。しかし、昭和4年(1929)には世界恐慌のあおりを受け、化学繊維の普及が追い打ちをかけるように繭の価格は下落、営業は赤字となり、昭和16年(1941)には鳥栖にあった片倉製糸紡績㈱に買収され廃業となります。一方、工場跡地は軍部に接収され大刀洗航空機製作所基山工場として操業されることになったのです。

■第5回きやま創作劇【予習編6】
●金四製糸場基山支店
■第5回きやま創作劇【予習編6】
●民家の工事で見つかった製糸場時代の煙突の基礎

 当時の工場の景観や、工場内での様々な様子を知ることができる古写真が残されていることは、当時の経済状況や生活環境を知る上で、大変貴重な資料と言えます。これらの古写真は、劇中でも使われますので、「あぁ野麦峠」でイメージされる「女工さん」たちの姿とは大きく異なる「近代末期の女工さんたちの姿」を併せてご覧ください。

 その背景には、欧米列強に肩を並べるために近代化を急速に進め、世界の中の日本を標ぼうしていた我が国が、世界の労働環境改善の流れに乗らなければならなかった社会的流れの表現であり、草稿から施行まで42年の歳月を要し、労働環境を大きく変えることになった「工場法」施行があったのです。



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Posted by 基山の歴史と文化を語り継ぐ会  at 10:52 │Comments(0)参画事業

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