2015年07月26日

集落の境界に建つお地蔵さま

 様々な場所に建っておられるお地蔵さま、正式には「地蔵菩薩」ですね。
 地蔵菩薩さまは、どのような菩薩さまなのでしょう。これを紐解くことで、様々な場所に建っておられる意味を読み解くことができます。

 地蔵菩薩さまは、自ら地獄、賽の河原に出向き、苦しんでいる衆生の罪を滅し成仏させる菩薩さまと伝えられています。最も弱い立場の人びとを救済する菩薩さまなのです。

 このことから、三途の川を渡れずにいる人びとや子ども達を救うという言い伝えから、現世に命短く他界した子ども達を救う地蔵さまとして多くの信仰を集めたり、墓地の入口に地蔵さまが建てられています。特に墓地の入口には、全ての生命は6つの世界(地獄道、餓鬼道、畜生道、修羅道、人道、天道)に転生するという仏教の六道輪廻に由来し、それぞれの道で地蔵菩薩さまが救済するという思想に基づき六体のお地蔵さまをお見かけします。
■うきはの墓地にある六地蔵さま
集落の境界に建つお地蔵さま

■奈良の墓地にある六地蔵さま
集落の境界に建つお地蔵さま

 意味は転じていくもので、猿田彦大神さまと庚申尊天さんの混同について記したように、お地蔵さまも次第に意味が転じていきます。

 お地蔵さまが持つ救済の力から、墓地の入口に建ち、あの世に旅立つ衆生を救済する、三途の川、いわばあの世とこの世の境界に建つという意味から、境界に建ち衆生を救済する意味へと転じていきます。
 かつて人びとが暮らす集落を出ること、それはどのような危険が待ち受ける場であったか、多くの古文書が伝えています。私たちが暮らす基山も、かつて長崎街道の往来が盛んであった頃、三国境付近では山賊が出ていたと言い伝えられています。集落の外には、死が待ち受けている場であったのです。

 この現世(集落)、あの世(集落の外)との境界に建つお地蔵さまとして、六地蔵さまが建てられるようになります。基山でも2区に六地蔵さまが祀られています。この六地蔵塔が建つ場は、集落の境界ともいえます。そのような視点で、お地蔵さまを見てみると、集落の本来の形がみえてくるかもしれません。
集落の境界に建つお地蔵さま
集落の境界に建つお地蔵さま
■2区にある六地蔵さま


 この集落(現世)、集落の外(あの世)との境界には、墓碑である卒塔婆も建てられていました。これは、また別の機会に記しましょう。



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Posted by 基山の歴史と文化を語り継ぐ会  at 08:08 │Comments(0)基山の文化遺産

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