2018年09月22日

■お祭りと政教分離

 各地の神社で催行されるお祭りに、自治会が関与することについて、政教分離に反するという意見を耳にします。誰が「政(政治組織)」で、誰が「教(宗教組織)」かを考えた時、荒穂神社の大祭を例にとると、大祭は、荒穂神社を主宰する氏子会が取り仕切り、氏子の人々によって支えられています。したがって、相互に宗教組織であることを考えると、政教分離には抵触しません。一方、荒穂神社の御神幸まつりを民俗芸能行事として地方公共団体である町役場が宣伝することは、一方の極としての「政」である町役場であることを考えると、政教分離に抵触するのでしょうか。

 この場合、昭和40年に争われた津地鎮祭訴訟の際、最高裁判決で明らかにされた「行為の目的が宗教的意義をもち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるか否かをもって判断する。」という「目的効果基準」に照らした時、何を目的として宗教祭事である御神幸まつりを宣伝しているのかが、分岐点となります。
 現在、御神幸まつりは、基山の伝統芸能を保存継承する立場から地方公共団体である町役場も協力し、宣伝が行われています。これが仮に荒穂の神信仰を先導し、「国家」祭祀として位置づけ、個々人の思想信条までを統制していく手段とした場合は、政教分離の原則に大きく反しますが、氏子の人々によって支えられた様々な祭事を民俗行事として位置づけ、保存継承することを広く知っていただくことを目的として広報することは、この「目的効果基準」からして政教分離に該当しないと判断されます。
■お祭りと政教分離
■奉納芸能(災払い)
■お祭りと政教分離
■奉納芸能(鉦風流)
■お祭りと政教分離
■奉納芸能(獅子舞)
■お祭りと政教分離
■奉納芸能(大名行列)

 同じ様な行為として、国宝や重要文化財である寺社建築の保存修理に文化庁補助金が投じられていますが、これは政教分離に抵触しません。何故なら、寺社建築の技術や意匠、背景にある歴史としての宗教観念を記録し後世に伝えていくことを目的としているためで、国民の思想信条を統制するために特定寺社建築を保存修理しているのではないからなのです。
■お祭りと政教分離
■熊本地震で倒壊した阿蘇神社社殿(国指定重要文化財)
■お祭りと政教分離
■平成の大修理が終わった高良大社(国指定重要文化財)
(高良の神さまは、荒穂の神さまと力比べをした昔話が残されています。)

 政教分離とは何かを知った上で、議論を深めていく必要があります。



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Posted by 基山の歴史と文化を語り継ぐ会  at 06:56 │Comments(0)基山の文化遺産

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