2021年12月25日

第5回きやま創作劇「絹の糸」 総括編2

 欧米列強の外的圧力に屈した清国のあり様を知った日本の人々は、同時に黒船襲来という現実に対峙せざるを得なくなります。そこから時代は近世社会から近代社会へ、封建的武士の社会から再び中央集権的な国家社会へと激動の道を歩んでいくことになります。ここは、第3回「草莽の民」で描かれた物語の舞台です。
 この欧米列強の外的圧力に抗するために、日本は富国強兵政策の内、外貨獲得施策の一つとして殖産興業化の道を歩むことになります。そこには、蒸気機関を使うとはいえ、人の手を介する工場制手工業、いわば現代のオートメーション化した機械生産に至るまでの中間的な人の手と機械による工場生産体制でした。


●劇中での製糸工程の解説場面

 ここに、劣悪な工場労働が出現していくことになります。加えて、手工業と機械工業の中間的な生産では済まされない、近世的な労働価値観の残存ともいえる、12時間労働が当たり前の社会が存在していたことも忘れてはなりません。
 この労働環境を改善する動きは、明治20年(1887)の「職工法」制定の動きから始まり、42年の歳月を要し昭和4年(1929)7月に女子労働者と年少労働者の深夜業を完全撤廃し、一日の就業時間を制限した工場法の運用開始によって結実します。

 4つの港を開いていたとはいえ、限定的開国主義を堅持してきた江戸幕府の近世社会から、世界に開かれた国家を目指した近代日本は、その表裏の関係としての国際社会からの眼にさらされ、労働環境の改善に踏み切らざるを得ない現実に直面し、昭和6年(1931)運用開始を2年前倒しし工場法の施行に舵を切らざるを得なくなります。

 「絹の糸」の舞台である基山製糸場は、工場法の運用直前に我が町基山で操業を開始します。当然のことながら、「工場法」運用開始を意識しながらの操業開始であったことは想像できます。当時のことを物語る古写真は、「工場法」の運用開始を物語る貴重な資料であるといえますが、当時のことを記憶されている基山在住の方があまりおられないのは不思議でした。やはり、そこには工場側の都合である管理体制に基づく寄宿舎生活が背景にあり、郷里を離れ基山へと働きに出てきていた労働条件が存在していたことを物語っているのかもしれません。


●寮母「岩子さん」に指導される女工さんたち

 「ホタル列車」が男性の立場からの近代末期の物語であるならば、今回の「絹の糸」は女工たちの姿を描きつつ女性の視点から近代末期の社会を描いた作品であったともいえます。

 さぁ、次回があるならば、どんな物語が描かれるのでしょうか・・・・


 おしまい
  


Posted by 基山の歴史と文化を語り継ぐ会  at 09:43Comments(0)参画事業基山の文化遺産

2021年12月24日

第5回きやま創作劇「絹の糸」 総括編1

 12月12日の公演後、通常であれば「第5回きやま創作劇」を振り返り、創作劇で描かれた時代背景を知る講座や制作にあたっての振り返りのトークショーを開催しておりましたが、コロナ禍ということもあり、開催しておりません。

 そこで、今回は本ブログで時代背景について振り返りを行っておきましょう。

 きやま創作劇に描かれる様々な舞台の根底は、我が町基山を舞台とした歴史や文化に軸足を置き創られているということはご存知のとおりです。ただそれだけでなく、我が町基山の歴史は、「きやま」のこの地だけで成り立っているものではありません。人とひととがつながっているように地域の歴史-日本の歴史-世界の歴史と、人類の日々の営みの中の一つとして基山の歴史があるということも、つねに語り続けています。

 きやま創作劇の原点ともいえる「こころつないで※」は、氏族制社会(地縁・血縁で結ばれた「顔見知り」の社会)から古代国家形成(制度によって連帯させられる社会)へとつながっていく歴史の一幕として。第1回きやま創作劇「ホタル列車」は、世界恐慌にはじまり軍国主義へと突き進む日本の姿と帝国主義世界のうねりの中にのまれていく近代末期の社会の一幕として。第2回「八ツ並の姫」は、中央集権国家として生まれた古代国家体制が崩壊し、群雄割拠の武士の社会である中世的世界へ移行する過程で生じた、「家」と「家」との争いに巻き込まれていく一人の姫の物語です。
 そして、第3回「草莽の民」は、皆さまが日頃から目にするであろうヤカンの蓋が「湯気」に押し上げられる様子、これに端を発した蒸気機関の発明。ここから世界へと広がる欧米列強の世界進出の渦の中に巻き込まれた東アジアの中の日本の苦悩の一幕として描かれています。

 ●蒸気で持ち上がるヤカンの蓋

 では、第5回「絹の糸」は、どのような社会情勢の中の舞台として描かれているのでしょうか。

 キーワードは、女工たちの談笑の場面で交わされる正子のセリフにあった「工場法」です。


●一日のお仕事を終え、ひと時の談笑場面

 ・・・・・・・・つづきは、次回へ

※基山町立小学校・中学校合同創作劇としての「こころつないで」と、大人を加えた第4回きやま創作劇「こころつないで」があります。
  


Posted by 基山の歴史と文化を語り継ぐ会  at 15:54Comments(0)参画事業

2021年12月20日

第5回きやま創作劇 お疲れ様の会

 本日、12月20日(月)午後6時30分から、基山町民会館小ホールにて「第5回きやま創作劇」公演を終え、お疲れ様の会が開催されました。

 公演を終え、一週間の時を経て、安堵感と「創作劇」ロス感が混じり合う、そんな雰囲気の中、始まりました。
 御出席いただいた松田町長、柴田教育長より参画した皆さんに労いの言葉をいただきましたこと、心より感謝申し上げます。松田町長からは、「3回オーディションに落ちたので、次回はリベンジしたい。」との意欲あるご発言まで飛び出していました。


●松田町長からのご挨拶

●柴田教育長からのご挨拶

 結びに、制作総指揮の福永さんより、参画された皆さんに対し、お手紙が手渡されていました。何が記されているのか、気になりますが、一言ひとことを心に刻み、次への一歩へと歩みを進めでください。


●制作総指揮の福永さんから

 何はともあれ、今回も無事公演を終えることができたことは、本当に参画された皆さまのお陰様であるとともに、我が町基山のご先祖様のご加護のお蔭と心より感謝申し上げる次第です。

 ありがとうございました。

 では、皆さん、また、集う日まで・・See you next stage・・!。

  


Posted by 基山の歴史と文化を語り継ぐ会  at 21:37Comments(0)参画事業活動・報告日記

2021年12月19日

■第5回きやま創作劇【感謝編3】

 きやまの創作劇誕生から早10年が経ちます。その間、公演までの道のりの中で、劇とは別に様々なドラマ(物語)が誕生しています。そして、多くの出会いもあれば、別れもありました。

 昨年の中断から再起の今年、かつての基山町小学校・中学校合同創作劇に参画してくれたOB・OGの姿もたくさんありました。おとなになった彼らの成長に、驚きと頼もしさを感じるとともに、自らの年齢も「自覚」したところです。



 我が町きやまのみならず、関東・関西、日本国中に関係したみなさんが飛び出していっています。劇に参画したことから保育士を志す先輩、医療従事者を目指す先輩、声優を目指す先輩、直近ではNHKラジオ番組にデビューした先輩など、目指す目標は様々ですが、我が町きやまを「原点(帰って来ることができる居場所がある)」として、世界へ羽ばたいていって欲しい。そして、きやま創作劇に集う子どもたちの「良き目標」として育っていって欲しいと願っています。

 年齢に関係なく「人の可能性は無限大」これを体感し実感できる「きやま創作劇」です。

 「中村千代」を演じた彼女が流した涙。自らの涙です。

 もし疲れたら、いつでも帰って来ることができる場所
 それが我が町「基山」です。

 これまでも、そしてこれからも。
 一年、一回を「皆が集う場」として「きやま創作劇」を積み重ねていけたら・・・・。



 集ってくださった皆さま、心より深く・深く感謝いたします。
 ありがとうございました。

※「続けなければならない」のではなく、一年に一回集う場を創ることを大切にしていけたらと思います。「苦になったら」中断もある。でも、また始めたいと思えば、志を同じくする有志で始めていくことも選択肢の一つとしてあり得ると考えています。それが、未来のきやまの人たちに継承したいと思う「文化遺産」だと思います。
  


Posted by 基山の歴史と文化を語り継ぐ会  at 09:21Comments(0)参画事業

2021年12月15日

■第5回きやま創作劇【感謝編2】

 第5回を迎えた「きやま創作劇」。

 公演後に、観客の方から「演じている子どもたちが、自らの中に「基山の歴史」を落とし込んで、理解して演じているのが素晴らしい。」という感想をいただきました。歴史を学ぶ原点、それは身近な経験(成功・失敗)を身近な人びとに伝えていくこと。そして、経験を豊かにそして確かなものとしていくため世界観を広げて理解していくことだと思います。創作劇を演じるにあたって、必ず実践されていることは、事前学習が行われ、一回一回の劇で描かれる地域や時代背景、そして歴史的意味(歴史学上の位置)を学び、公演へと臨んでいきます。その成果の表現として、演じるキャストの皆さんの身体からにじみ出るオーラへと育っていっているのだと思います。

 学びは自発的に!それが一番心に残り、記憶に残る。


●「契山伝説」の一場面

 女工たちのセリフにあった「坂妻よ・・、坂妻!」の「坂妻?って、何?」からキャストの一人が調べ学習をしていました。


●女工たちの会話の場面

 自らの疑問に大きい・小さいはない。一つひとつの疑問を解決すること、これが真の学びへと成長していくキッカケだと思います。疑問をもって調べた彼女たちは素晴らしいと思います。次は、調べた内容の真偽を確認することへとつながっていけば、もう「一人立ち」でしょう。その日も近いと感じました。

 集った多くの皆さまから、お互いに多くのことを学ばさせていただく場、そこに「きやま創作劇」の社会的役割が存在していると思います。年齢に関係なく小学生から大人の皆さまの一つひとつの御言葉・行動に様々なことを学ばさせていただいています。本当に、ありがとうございます。
  


Posted by 基山の歴史と文化を語り継ぐ会  at 06:25Comments(0)参画事業

2021年12月13日

■第5回きやま創作劇【感謝編1】

 平成24年に始まった我が町きやまの創作劇の取組も、昨年の中止をはさんで通算9回の公演を無事終えることができました。公演にたどり着くまでには、晴れやかな舞台に立つキャストの背後に実に多くの皆さま方が微に入り細に入り支えてくださっています。

 劇素材情報収集のために取材に応じてくださった皆さま、事前学習差配、大道具・小道具作成、衣裳作成、メイク差配、練習会場手配、チラシ・ポスター作成(今回のポスターイラストは、創作劇OGによる作品です)、日常的な大ホールを含めた舞台監理、舞台照明、舞台音響、関係イラスト作成から映像作成、広報手配、公演記録撮影、人員監理、煩雑な関係する事務処理、きやまwebの駅への「日記」書き込み、毎回楽しみにお越しくださるお客様、そして忘れてはならないのが、これら関係者すべてを支えてくださっているご家族の皆さまです。

 実に多くの方々のご理解とご支援によって成り立っていることを、忘れてはなりません。


●受付の皆さま

●舞台準備のスタッフ

●きやまwebの駅の「日記」

 昨年の苦渋の決断からの再起の年であった第5回きやま創作劇「絹の糸 私の町の物語」でした。
 昨年の悔しさ、寂しさを今年にぶつけた1年だったと思います。

 ただ、小学生から大人まで、「オールきやま」で取り組む「きやま創作劇」ですが、未だ収束しないコロナ禍にあって、参画者に対し、年齢と自律性の担保という一定の制限をせざるを得ませんでした。参画したかったけれど出ることができなかった方々に、心より深くお詫び申し上げます。このコロナ禍が一日も早く収束し、「ふつうの日常」を取り戻すことができたら、再び「オールきやま」で船出したいと思っております。

 くれぐれも今日を境に「きやま創作劇」ロスになりませんよう、「おのおの方」、次への一歩を踏み出してください。
 
 結びになりますが、関係してくださいました、実に多くの方々に心より深く、深く感謝申し上げます。

 ありがとうございました。

※「絹の糸」に登場した基山製糸場に関する情報のみならず、
「ケイ坊」「照ちゃん」は、実在の方々です。

●劇中の「ケイ坊」
「焼き蚕」の情報は、基山にご在住の「ケイ坊」からの聞き取りに基づいています。
  


Posted by 基山の歴史と文化を語り継ぐ会  at 22:37Comments(0)参画事業

2021年12月12日

■第5回きやま創作劇 公演

 本日、基山町民会館大ホールを舞台に、第5回きやま創作劇「絹の糸 私の町の物語」の公演を迎えました。コロナ禍でできることを考え・悩み、そしてたどりついた「朗読劇」形式でした。

 たくさんの方々にお越しいただき、心より深く感謝申し上げます。
 我が町きやまの歴史と文化を素材とし、基山でしかできない、基山の物語を、基山に住むみんなで創り上げたOnly Oneの物語です。





●笑いあり、涙ありの感動の舞台

 無事にこの日を迎えることができたのも、関係していただいた多くの皆様のご支援と御理解のお蔭様と心より感謝いたしております。まだ、今日の「成果」は、今日で終わりではありません。関係していただいたキャスト、スタッフの皆さま、今日から二週間、自らの健康管理、手洗い・うがいの励行を心よりお願いいたします。

 関係していただいた皆さまが、無事、12月26日を迎えたその日が、今回の公演の「成功」の日です。支えてくださった方々、ご理解くださった方々への「恩返し」ができたことになります。どうか日々の自己管理を心よりお願いいたします。

 でも、今日は「無事」結びを迎えたことを心より感謝いたします。

 ご来場いただいた皆さま、ご支援、御理解いただいた多くの皆さま、そして集ってくださったキャスト・スタッフの皆さまに改めて心より深く、深く感謝申し上げます。一年、一回を積み重ねていく「きやま創作劇」です。「また、来年!」かどうかは、また、来年のその時に「ふつふつ」とわき上がってくるでしょう。それまで、エネルギー充填を皆さん、よろしくお願いいたします。

 「感動」をありがとう!
  


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2021年12月11日

■第5回きやま創作劇【予習編7】

セリフへのこだわり

 劇中に登場する女工さんたちの出身地が、鹿児島、大分、宮崎、佐世保と九州各地から出向いてきている設定で、そこ・ここの方言が使われています。当時の女工さんたちも、工場制手工業であったこともあり、近場からの「出勤体制」ではなく、時間拘束が可能な寮生活が採用されていました。

 主役である千代さんは、軍港の町・佐世保から我が町きやまの製糸場へ来たという設定で、話し言葉もわずかに異なっています。
 標準語:そのようなことをしてはだめです
 基山 :そぎゃんことをしちゃだめばい
 佐世保:そがんことばしたらいかんばい

 標準語:は~っ、煩わしい~っ
 基山 :は~っ、しぇからしか~っ
 佐世保:は~っ、やぐらしか~っ

 単語的に、表現が全く異なる言葉もありますが、「そぎゃん」が「そがん」に変化しているところは、なんとなく意味は通じるところです。最近分かったことですが、大牟田の家族の話し言葉と佐世保の話し言葉が似ている印象を受けています。かつて炭都であった佐世保と大牟田の近しい関係かもしれません。

 標準語:先生が話しておられる。
 基山:しぇんしぇいが話しよんしゃ~っ
 大牟田:先生が話しよらす
 佐世保:しぇんしぇいが話しよらす

 千代と実の話し言葉は、佐世保と基山で異なっているのですが、次第に互いの話し言葉に感化されていく様(キャスト達の「共感(同化)」かもしれません・・・)は、外国語は恋しい人から習うのが早道ということの表れかもしれませんね・・・。

 その辺も注意してお聞きください。


●大ホールでの練習の様子

 明日、いよいよ公演です。もてる力を全て出しきるよう、みんなで「こころつないで」進みましょう!!
  


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2021年12月11日

■第5回きやま創作劇【予習編6】

四、絹の糸

 今回の公演に際し、書き下ろされた作品です。「絹の糸 朗読劇ver」と銘打たれていますが、実は第5回きやま創作劇として1時間を越える脚本が昨年度作成されています。今回は、コロナ禍を乗り切るためにやむを得ず「朗読劇ver」に再構成されたものです。

 物語の舞台は昭和前期、我が町きやまにあった製糸場に勤めた一人の女性と基山の青年の甘くせつなくもはかない物語です。物語の本筋は、劇を御覧いただくとして、物語の舞台となった我が町きやまにあった製糸場について少し触れておきましょう。

 現在のJR基山駅東方の一帯に、長野県に本社を置く金四製糸場の基山支店が大正15年(1926)2月に設立され、5月2日の落成式から操業を開始します。基山のみならず周辺の町や村でカイコを育てる養蚕が盛んに取り組まれます。しかし、昭和4年(1929)には世界恐慌のあおりを受け、化学繊維の普及が追い打ちをかけるように繭の価格は下落、営業は赤字となり、昭和16年(1941)には鳥栖にあった片倉製糸紡績㈱に買収され廃業となります。一方、工場跡地は軍部に接収され大刀洗航空機製作所基山工場として操業されることになったのです。


●金四製糸場基山支店

●民家の工事で見つかった製糸場時代の煙突の基礎

 当時の工場の景観や、工場内での様々な様子を知ることができる古写真が残されていることは、当時の経済状況や生活環境を知る上で、大変貴重な資料と言えます。これらの古写真は、劇中でも使われますので、「あぁ野麦峠」でイメージされる「女工さん」たちの姿とは大きく異なる「近代末期の女工さんたちの姿」を併せてご覧ください。

 その背景には、欧米列強に肩を並べるために近代化を急速に進め、世界の中の日本を標ぼうしていた我が国が、世界の労働環境改善の流れに乗らなければならなかった社会的流れの表現であり、草稿から施行まで42年の歳月を要し、労働環境を大きく変えることになった「工場法」施行があったのです。  


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2021年12月10日

■第5回きやま創作劇【予習編5】

三、西海会社見学記

 この表題に違和感を覚えられた方は、「きやま」をご存知の方ですね。
 木山口町にある製薬会社の㈱西海製薬さんのことです。
 表題は、過日に記しましたが、昭和13年(1938)に郷土教育の書『基山郷土読本』にあるタイトルを引用したことから、表題のようになりました。
 ㈱西海製薬さんは、西海製剤合資会社として大正4年(1915)設立ですが、基本となる「配置売薬」の仕組は、江戸時代から現在も引き継いでおられます。
 ㈱西海製薬さんの社屋は、昭和29年(1954)建築で長崎街道沿いにあり、戦後復興のさなかに新築され、いわばこれからの基山復興の気概を見せる象徴的な建物であるといえます。現代建築でありながら木造2階建ての建物は、長崎街道の歴史的風致を維持向上する特徴的な建築物といえるでしょう。



●長崎街道沿いに建つ㈱西海製薬

 旧鳥栖-筑紫野有料道路の旧料金所手前、基山町側上り線を通行する方々にみえるように置かれている「どちらさん、アミドサン」の屋外広告物看板は、「きやまナイズ」された楽しい語呂合わせ看板で・・・・・・・・・・・  

 大好きです!
  


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2021年12月10日

■第5回きやま創作劇【予習編4】

二、秋光・実松物語

 第2回きやま創作劇で描いた「八ツ並の姫」と大きく関わる秋光・実松兄弟の話です。物語の内容は、劇にお任せするとして、劇中で語られる「太宰府の原山の僧」という件が出てきます。この「太宰府の原山」について少し説明をしておきましょう。

 「太宰府の原山」は、現在の太宰府市連歌屋2丁目あたり、太宰府天満宮の北西側の四王寺山の麓にあった「原山無量寺」のことを指し、通称「原八坊」と称されるようにいくつもの坊があったと云われています。


●原山無量寺の位置

 天台宗の寺で、創建は平安時代前期、9世紀中頃と伝えられ、奈良時代後半、8世紀の後半に起きた新羅呪詛を発願とした四王院(現在の四王寺山にあった寺院)の分院として開山したと伝えられています。この原山無量寺の僧によって菅原道真公を弔う葬儀が取り仕切られたことは、よく知られています。
 さらに延元元年(1336)には敗走してきた足利尊氏が武藤少弐頼尚に迎えられて入山した寺としても知られ、歴史上の人物たちと深く関わるお寺でした。
 この原山無量寺は、宝満山の麓に展開していた有智山寺と対宋貿易の利権を巡って度々争い、僧兵など武力を備えていたと云われています。
 しかし、その原山無量寺も、四王寺山の麓にあった寺院群がそうであったように、薩摩の島津勢によって起こされた岩屋城攻めの戦火によって多くが消失し、現在は住宅街の中に石碑が残されているだけです。
 その面影は現地に残されていませんが、江戸時代に描かれたとされる「原山無量寺古図」にその姿を見ることができます。

現地に残る左)原山碑 右)原山中堂碑


●現在の原山無量寺跡の様子
  


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2021年12月09日

■第5回きやま創作劇【予習編3】

 今日からは、描かれている物語について少し予習しておきましょう。

 一、伝説の荒穂宮(①木の尊 ②契山)

 皆さんもよく知る、我が町きやまにある基山(きざん)の守り神である瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)を主人公とする物語です。

 天孫降臨の神である瓊瓊杵尊様の「きやまナイズ」された物語であることはご存知でしょう。原典は、我が国最古の歴史書『古事記(こじき)』にあり、物語の大筋を『古事記』に依りつつ、描かれる場所や神々ときやまの民との関係性については「きやまナイズ」されている物語です。
 原典である『古事記』瓊瓊杵尊説話の中の「五.木花之佐久夜毘売(このはなさくやび(ひ)め 木花咲耶姫)」を、この機会に基山町立図書館で予習されてみては如何でしょうか。余談ですが、天孫降臨された神に「寿命」ができた理由も併せて分かりますよ。



※基山町立図書館に置いてある「発見!きやまの歴史2 荒穂の神さまと御神幸祭」と「発見!きやまの歴史3 契山の物語」を併せてご覧ください。
  


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2021年12月08日

■第5回きやま創作劇【予習編2】

 もう一つ、これまでの創作劇と異なる点は、オムニバス朗読劇と称しているように、4編からなる独立した物語で構成されています。



 通常1時間30分から1時間45分ほどの長編演劇で構成されるところを、短編を4つつなげることで、コロナ禍における大人数の参画者数を避けキャスト数の絞り込みを行い、絞り込みによる「小規模」感を補うために多彩な物語を連ねることとしました。

 オムニバス版といえども、源流は我が町きやまに伝わる物語であり文化遺産であることに違いはありません。
 我が町きやまにある素材を存分に使い、どこにもない個性豊かな創作劇になっています。


●この美しいおみ足!! 誰・・・


●この板戸の裏に隠された「ひ・み・つ」  


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2021年12月07日

■第5回きやま創作劇【予習編1】

 いよいよ今週日曜日に迫った第5回きやま創作劇「絹の糸」!
 今日から5日間、観劇にあたっての予備知識をお伝えしましょう。

 これまでの創作劇と大きく違うところは、コロナ禍でもできることを探り、たどりついた手法として、「朗読劇」を採用したところです。観劇される皆さまはもとより、演じるキャスト、そして関係するスタッフの安全性確保を優先し、極力動かない舞台演出に努めています。




●「絹の糸」の一場面

 したがって観劇される皆さまには、動きのない舞台だなと思われるかもしれませんが、昨今のコロナ吹き荒れる社会情勢にあって、その中でも我が町きやまの演劇の「炎」を消したくないという思いからの手法選択であったとご理解いただきたくお願いいたします。
  


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2021年12月05日

■第5回きやま創作劇

 令和3年12月12日(日)
 『オムニバス朗読劇 絹の糸 ~私の町の物語~』公演 間近!

 コロナ禍でもできることを考え、たどり着いた作品です。

●私の町の物語
1.伝説の荒穂宮(①木の尊 ②契山)
2.秋光・実松物語
3.西海会社見学記
4.絹の糸

 の4部作から創られています。
※1と3の題名は昭和13年(1938)に郷土教育の書としてまとめられた『基山郷土読本』に記されている題名を使用しています。

 いつものことですが、時代背景をおさえ、セリフ覚えをこなす勤勉な子供たちの立ち回りと、なぜか本番前日まで舞台上で台本を手放さない「強気」の大人の方々との力が合わさり、12日を迎えることでしょう。

 今回は、どんなドラマが生まれるのか、お楽しみに!


提供:きやま創作劇実行委員会  


Posted by 基山の歴史と文化を語り継ぐ会  at 13:13Comments(0)参画事業

2021年12月04日

■1週間後に迫った「第5回きやま創作劇公演」

 昨年度は、新型コロナウィルス感染症という世界を席捲した恐怖から町民を守るため、断腸の思いで公演中止の判断をし、代替措置として「映像でたどる『きやま創作劇』」上映を行いました。
 毎年、楽しみにしてくださっていた観客の皆さま、そして何よりも創作劇に参加していただく多くの子どもたち、大人の方々、スタッフの皆さまの思いに応えることができず、残念で悔しい思いで過ごした一年でした。
 その思いを胸に、今年はこのコロナ禍にあって「できること」をやろうということで、「オムニバス朗読劇 絹の糸 ~私の町の物語~」を上演いたします。

 今日で、公演まで一週間を切ります。
 様々な関係するスタッフが少しずつ参画し、上演にむけてのエネルギー注入が次第に高まっていきます。


●舞台指導の様子


●みんな一丸となって進んで行きましょう!!

 「できることを」「できる範囲」で持ち寄ることで創り上げる「きやま創作劇」です。
 持てる力をしっかり発揮できるよう、これからみんな「全集中」で進んでいきましょう!
  


Posted by 基山の歴史と文化を語り継ぐ会  at 20:42Comments(0)参画事業